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お菓子を中心にした美味いもん&海外旅行日記サイト


by KinichiM
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博士の愛した数式

小川洋子の「博士の愛した数式」を読んだ。

「Sugar Time」とか「妊娠カレンダー」を読んで、けっこう自分の好きな文章の人だなーとは思ってたので、映画化された際もすごく気になっていた。今回の帰省で、温泉の大浴場でのんびり読む本として、本屋で何かないかな~と探していた時に出会ったので買ってみた。

交通事故の後遺症で記憶が80分しか持たない「博士」と10代で妊娠、出産してシングルマザーとなり、10歳の「√」と博士に呼ばれる一人息子を持つ私、そして√との三人の交流を描いた作品。今回初めて知ったけど、「東京タワー」で一躍世の中に名を知られた「本屋大賞」の2004年受賞作であった。読んでみてそれが納得いく内容だった。

「時間」の止まった中で流れる三人の交流。√は成長していくけど、博士の中のルートはいつも「初めまして」。だけど、愛情は「初めまして」でなく、時間の中に溢れるほどに流れている。
博士にとって、阪神のエースは2000年を過ぎても江夏豊。だから√にとっても、ヒーローは江夏。江夏の素晴らしさが語られるたびに、流れている時間の優しさが伝わってくるようだった。
人間は身内以外にも優しい気持ちを持てる生き物なのだ。自分が相対する人が幸せであればあるほどいいと思う。それが愛する人ならなおの事そうだけど、そういうことから親愛の情も生まれていくのだと思う。


この三人は、それぞれが相手を思う気持ちが絡み合って、それぞれを幸せにする時間を生み出せている。こういう本が大衆の支持する賞を獲るということは、殺伐とした昨今だけど、人が人を思う気持ちは健在なんだと思う。
by KinichiM | 2007-01-16 14:37 |